KAWAI MINI PIANO
KAWAI MINI PIANO
- 高さ810mm 幅725mm 奥行430mm 40鍵。
オルガンより小さいピアノ「KAWAI MINI PIANO」
戦後、物資の少ない時代に、1台分の材料で2台を、2台分の材料で
3台作れないかと試行錯誤して完成したピアノだと聞いています。
繊細で美しく、時に大胆な日本の職人魂が処々にちりばめられています。
先ずは横になってもらった。
2脚のピアノ椅子の上に乗せることが
出来るくらい小さなピアノです。
木製キャスター。
中心に空けられた穴に鉄棒が通っていて
転がるというシンプルなもの。
これは前側です。
木製キャスター。
これは後ろ側。鉄棒の止め方は違います
が前側と同様の仕組みです。
横には動くけれど前後の動きは苦手とい
うカニさんピアノです。
得意の横歩きもしんどそうだったので外
してみました。
心棒が曲がっています。これではうまく
動けませんね
内部清掃。
フロントパンチングクロスは直径・厚さ
のサイズが特殊なので加工が必要。
バランスパンチングクロスは凡庸のもの
が使えます。
フロント、バランス共に全部交換。
引きバネで戻る仕組みの鍵盤。
ここに0.17mm線のコイルスプリング
がかかっていました。
鍵盤を外す時は先ずこれを外しておか
ないとバネが伸びきってしまいます。
既に無かったり、伸びきってしまって
いるものが多く、正常に着いているの
は1/3くらいでした。
オサの後側にも鍵盤後部と同じ細釘が
打ってあり、鍵盤の釘とオサの釘の間
にスプリングを架ける仕組みになって
います。
線径0.17mmのものを入手出来なかった
ので0.25mmのやつを引き伸ばして緩く
して使うことにしました。
せんべいみたいに硬くなった鍵盤枕。
カタカタと音がしたり、弾いた感触も
悪いので柔らかいクロスに交換します。
膠が枯れているので簡単にベリベリっと
剥がれます。
巾7.5mmの超薄型ハンマー。
特種な形状のハンマーなので整形して使
うことも考えましたが、深い弦溝はとも
かく、虫食いの方が深刻なので、交換す
ることにしました。
ダンパーフェルトの弦溝。
このピアノの弦は一音一本なので、見て
の通り真ん中に一本クッキリと刻まれて
います。
これは迷わず貼り替えます。
面白いアクション。
運動量が小さく、どこかの僅かな不具合
で へそを曲げます。
調整すれば驚くほど良く動きます。
バネで戻される鍵盤に負けていません。
この部品は通常「ダンパースプーン」
といいますが、これはスプーンには見
えません。
ゴルフクラブのパターに似ているで、
ここでは「ダンパーパター」と呼ぶこと
にします。
(他では通用しませんのでご注意下さい)
硬く薄くなったハンマーレールクロス。
鍵盤枕と同じように、こちらもベリベリ
っと剥がします。
ハンマーレールクロス貼り替え。
エンジ色のクロスにしました。
パテントナンバーが印されています。
風変わりなアクションの特許Noでしょ
うか。
弦とチューニングピン。
ひどく錆びているようには見えませんが
交換することにします。
珍しい Uターンしているバス弦。
やはり 錆びてますね。
弦のUターン基点はヒッチピンに相当す
るこの凸部でゆったりと折り返します。
バス弦を注文する際、折り返しの芯線部
分の長さ寸法を正確に伝える必要があり
ます。
ペダル窓、弦枕クロス貼り替え。
色はエンジ。
ハンマーレールクロスと同色で統一感が
あります。
弦を張ります。
通常、ピンに3周巻くものが多いのです
が、このMINI PIANOは2周巻き。
張力の緩い設計なのでしょう。
ゲージを作って巻きはじめのピンホール
の高さを決めます。
ゆったりと張り、プレッシャーバーを取
り付けます。
夕陽が差してきました。
また日が暮れる・・。
引きバネで戻す鍵盤関係が出来ました。
このまま うっかり鍵盤を外すとコイル
スプリングが伸びきってしまいます。
何回かやってしまいました(悔)。
巾7.5mmのハンマー。
浜松の専門業者さんに相談したところ
フェルト止めリベットが機械打ち出来
ないとのこと。
接着剤だけで止める方法もあるが、後
でパンクする可能性があるので、ここ
は妥協して、ぎりぎり リベット打ち可
能な8.8mmにサイズアップしました。
キャッチャー上下位置。
普通こんな整調はありませんが、この
ピアノに限っては重要な整調項目です。
やり方は、ゆっくりとハンマー後部を弦
方向へ押していき、キャッチャーがジャ
ック後頭部に接触し、ウィペンが持ち上
がり始める状態を微調整します。
キャッチャー=バックチェックで、ジャ
ック裏側(エンジのクロスの部分)=キャ
ッチャーとも言える何とも変わったアク
ションです。
バックスト ップ調整。
U字巾を拡狭して調整します。
この調整でキャッチャー上下位置も変化
するので、何度も反復調整します。
ダンパー始動調整。
UPのダンパースプーン曲げ工具は使え
ません。
アクションを手前に傾けて「パター」
を曲げて調整します。
出来上がりました。
譜面台がカワイイでしょう。
譜面台は折りたたみ式で上前板の裏に
格納することも出来ます。
愛車「明神丸」で納品。
納品先は、お店なので営業中は音が
出せません。
納品先近くに車を止めて密かに調律。
- デジカメの動画モード(モノラル)で録ってみました。
画質・音質は今イチですが少しだけ音が聞けます。
実際はもう少し艶と深みのある音です。
画像をクリック!